企業の経営活動において、営業や運送、出張などで高速道路を利用する機会は少なくありません。その際に発生する高速道路料金は、積もり積もって大きな経費となります。この経費をいかに効率的に管理し、削減するかは、多くの企業にとって重要な経営課題の一つです。そこで注目されるのが「法人向けETCカード」の活用です。
法人ETCカードを導入することで、経費精算の手間を大幅に削減できるだけでなく、各種割引制度の適用により、高速道路料金そのものを安く抑えることが可能になります。しかし、法人ETCカードにはさまざまな種類があり、「どのカードを選べば自社に最もメリットがあるのか分からない」と感じている経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、法人ETCカードの基本的な知識から、個人向けカードとの違い、導入のメリット・デメリット、そして経費削減に直結する最適なカードの選び方までを網羅的に解説します。さらに、2024年最新のおすすめ法人ETCカードを10種類厳選してご紹介します。自社の事業規模や利用状況に合わせた一枚を見つけ、業務効率化とコスト削減を実現するための一助となれば幸いです。
目次
法人ETCカードとは?個人向けとの違い
法人ETCカードとは、その名の通り、法人や個人事業主を対象として発行されるETCカードです。業務で発生した高速道路の通行料金を、個人のお金ではなく会社の経費として精算するために利用されます。従業員の立替払いをなくし、経費管理を一元化することで、経理業務の効率化に大きく貢献します。
多くの企業では、従業員が業務で高速道路を利用する際、個人の現金やクレジットカードで一時的に立て替え、後日領収書を元に経費精算を行うというフローが一般的でした。しかしこの方法では、従業員の一時的な金銭的負担に加え、経理担当者が大量の領収書を確認・処理する手間が発生し、非効率的であるという課題がありました。法人ETCカードは、こうした課題を解決するための有効なツールです。
法人ETCカードと個人向けETCカードは、高速道路の料金所をスムーズに通過できるという基本的な機能は同じですが、その目的や仕組みにはいくつかの重要な違いがあります。
項目 | 法人ETCカード | 個人向けETCカード |
---|---|---|
契約名義 | 法人名または屋号 | 個人名 |
引き落とし口座 | 法人口座または事業用口座 | 個人口座 |
利用明細 | 会社の経費として一元管理 | 個人の利用履歴と混在 |
発行可能枚数 | 複数枚発行可能な場合が多い | 原則としてクレジットカード1枚につき1枚 |
主な割引制度 | ETCマイレージ、平日朝夕割引などに加え、大口・多頻度割引(ETCコーポレートカード)など | ETCマイレージ、平日朝夕割引、深夜割引、休日割引など |
主な用途 | 業務利用(経費精算) | 私的利用(プライベート) |
審査対象 | 企業の信用情報や事業実績 | 個人の信用情報 |
これらの違いの中で、特に重要なポイントは「引き落とし口座」と「発行可能枚数」です。
法人ETCカードの利用料金は、法人口座から直接引き落とされるため、経費の公私混同を防ぎ、透明性の高い経費管理が実現します。利用明細には「利用日」「利用区間」「金額」などがカードごとに記録されるため、経理担当者はそのデータを会計ソフトに取り込むだけで処理が完了し、手作業による入力ミスや確認作業の手間を大幅に削減できます。
また、営業車やトラックなど、社用車を複数台保有している企業にとって、従業員や車両ごとに複数枚のETCカードを発行できる点は大きなメリットです。誰が、どの車両で、いつ、どこを利用したかが明確になり、車両ごとのコスト管理や利用状況の把握が容易になります。これにより、不必要な高速道路利用の抑制や、ルートの見直しによるコスト削減にも繋がります。
一方で、個人向けETCカードを業務利用することも不可能ではありません。しかし、その場合、利用明細の中から業務利用分だけを抜き出して精算する必要があり、非常に手間がかかります。また、税務調査の際に、経費の妥当性を証明するための客観的な証拠として認められにくいリスクも伴います。企業のコンプライアンスやガバナンスを強化する観点からも、業務で発生する高速道路料金の支払いは、法人ETCカードに統一することが強く推奨されます。
このように、法人ETCカードは単に支払いをスムーズにするだけでなく、経理業務の効率化、コスト削減、そして企業としての信頼性向上に貢献する、経営に不可欠なツールと言えるでしょう。
法人ETCカードの3つの種類
法人ETCカードは、その発行元や特性によって、大きく分けて3つの種類が存在します。それぞれの特徴、メリット、デメリットを理解し、自社の状況に最も適したカードを選ぶことが重要です。
カードの種類 | 主な発行元 | クレジット機能 | 審査対象 | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|
法人カード付帯ETCカード | クレジットカード会社 | あり | 会社の信用情報 | ポイント還元、豊富な付帯サービス |
ETCコーポレートカード | NEXCO東/中/西日本 | なし | 利用実績、保証金など | 大口・多頻度割引による高い割引率(車両限定) |
ETC法人カード(クレジット機能なし) | 各種協同組合 | なし | 組合の独自基準 | クレジット審査なしで発行可能、設立直後でも作りやすい |
以下で、それぞれの種類について詳しく解説します。
法人カードに付帯するETCカード
これは、クレジットカード会社が発行する法人カード(ビジネスカード)の追加カードとして発行されるETCカードです。現在、最も一般的で、多くの企業に利用されています。
【特徴とメリット】
- ポイント還元: 法人カードの最大の魅力の一つがポイントプログラムです。ETCの利用料金もポイント還元の対象となるため、利用額が多ければ多いほど、多くのポイントが貯まります。貯まったポイントは、マイルに交換して出張費を節約したり、オフィス用品の購入に充当したりと、経費削減に直接的に貢献します。
- 豊富な付帯サービス: 法人カードには、空港ラウンジの無料利用、出張時の手荷物宅配サービス、ビジネス優待(会計ソフトの割引など)、国内外の旅行傷害保険など、ビジネスに役立つさまざまなサービスが付帯しています。ETCカードを利用することで、これらの恩恵も同時に受けることができます。
- 申し込みの手軽さ: すでに法人カードを保有している場合、追加で申し込むだけで比較的簡単に発行できます。新規で申し込む場合も、法人カードの申し込みと同時に手続きができます。
- キャッシュフローの改善: クレジットカードのため、利用料金の支払いが翌月以降となり、支払いまでに猶予が生まれます。これにより、企業のキャッシュフロー改善に繋がります。
【デメリットと注意点】
- クレジットカード審査: 法人カード本体の発行には、企業の経営状況や代表者の信用情報に基づく審査が必要です。設立間もない企業や、赤字決算が続いている企業の場合、審査に通らない可能性があります。
- 年会費: 法人カード本体や、ETCカード自体に年会費がかかる場合があります。年会費無料のカードもありますが、その分、ポイント還元率が低かったり、付帯サービスが限定的だったりすることがあります。
- 発行枚数の上限: カード会社やカードのランクによって、発行できるETCカードの枚数に上限が設けられている場合があります。多くの車両で利用したい場合は、事前に確認が必要です。
【こんな企業におすすめ】
- ポイントを貯めて経費を削減したい企業
- 出張が多く、空港ラウンジなどの付帯サービスを活用したい企業
- 設立から数年が経過し、経営が安定している中小企業
- キャッシュフローを改善したいスタートアップ企業
ETCコーポレートカード
ETCコーポレートカードは、NEXCO東日本、中日本、西日本の高速道路会社が、大口・多頻度利用者を対象に発行するETCカードです。最大の魅力は、その圧倒的な割引率にあります。
【特徴とメリット】
- 大口・多頻度割引: このカードの最大の特徴は、「大口・多頻度割引」が適用されることです。これは、1ヶ月の高速道路利用額に応じて割引率が変動する制度で、利用額が大きければ大きいほど割引率も高くなります。特に運送業やバス会社など、日常的に長距離を走行する企業にとっては、他のどのカードよりも大きなコスト削減効果が期待できます。割引は「車両単位割引」と「契約単位割引」の2段階で構成されており、条件を満たせば最大で30%~40%もの割引が適用されるケースもあります。(参照:NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本 各公式サイト)
- クレジット機能なし: 支払い専用のカードであるため、従業員による私的な買い物などに利用される心配がありません。
【デメリットと注意点】
- 車両限定: ETCコーポレートカードは、事前に登録した車両でしか利用できません。 登録外の車両で利用すると割引が適用されないため、レンタカーや従業員の私有車での利用はできません。
- 厳しい発行条件: 発行には、NEXCOが定める基準(例:1台あたりの月間平均利用額が5,000円以上など)を満たす必要があります。また、申し込みには事業協同組合を経由するのが一般的で、保証金の預託(通常、月間利用額の4倍程度)が求められます。
- 申し込みの煩雑さ: 申し込みには多くの書類が必要となり、発行までに時間がかかる傾向があります。
- 対象道路: 主にNEXCO3社が管理する高速道路が割引の対象であり、首都高速や阪神高速など、一部の都市高速道路では割引制度が異なります。
【こんな企業におすすめ】
- トラック輸送を中心とする運送業
- 長距離バスや観光バスを運行する会社
- 高速道路の利用額が毎月非常に高額になる大企業
ETC法人カード(クレジット機能なし)
これは、高速情報協同組合やETC協同組合といった、事業協同組合が発行するETC専用カードです。クレジット機能がなく、高速道路料金の支払いに特化しています。
【特徴とメリット】
- クレジット審査なし: 発行元はクレジットカード会社ではなく協同組合であるため、設立間もない企業や個人事業主、過去にクレジットカード審査に落ちた経験がある場合でも、比較的作りやすいという大きなメリットがあります。組合独自の審査基準に基づいて発行されます。
- 私的利用の防止: クレジット機能がないため、目的外利用のリスクを完全に排除できます。従業員に安心してカードを貸与できるため、ガバナンスの観点からも有効です。
- 後払い可能: クレジット機能はありませんが、利用料金は月末締めの翌月払いが基本となっており、キャッシュフローの改善に役立ちます。
【デメリットと注意点】
- 組合への加入が必要: カードを発行するには、まずその協同組合に加入する必要があります。その際に出資金(通常1万円程度、脱退時に返還)や、組合費、カード発行手数料、年会費などがかかる場合があります。
- ポイント還元なし: クレジットカードではないため、ポイントプログラムはありません。
- 割引制度: 深夜割引などの基本的なETC割引は適用されますが、ETCコーポレートカードのような高い割引率は期待できません。ただし、組合によっては独自の割引制度を設けている場合があります。
【こんな企業におすすめ】
- 設立1年未満のスタートアップ企業
- 個人事業主
- 過去にクレジットカード審査で不安があった企業
- 従業員の私的利用を厳格に管理したい企業
このように、3つの種類にはそれぞれ明確な特徴があります。自社の事業内容、高速道路の利用頻度、設立年数、管理方針などを総合的に考慮し、最適な一枚を選ぶことが経費削減への第一歩となります。
法人ETCカードを導入する5つのメリット
法人ETCカードの導入は、単に高速道路料金の支払いをキャッシュレス化する以上の、多岐にわたるメリットを企業にもたらします。ここでは、特に重要な5つのメリットを詳しく解説します。
① 経費精算の業務を効率化できる
法人ETCカード導入による最大のメリットは、経費精算業務の大幅な効率化です。従来の現金や個人カードでの立替払いでは、以下のような煩雑な作業が発生していました。
- 従業員側: 料金所で領収書を受け取り、紛失しないように保管する。月末などに、利用した日付、区間、金額を経費精算書に転記し、領収書を添付して経理部に提出する。
- 経理担当者側: 従業員から提出された大量の精算書と領収書を一枚一枚突き合わせ、内容に誤りがないかを確認する。会計システムへの入力作業を行い、承認プロセスを経て、従業員の口座に現金を振り込む。
この一連のフローは、従業員と経理担当者の双方にとって大きな時間的コストとなっていました。特に、社用車を多く保有し、営業担当者が頻繁に高速道路を利用する企業では、この作業が月末の経理業務を圧迫する大きな要因となります。
法人ETCカードを導入すると、これらの作業が劇的に改善されます。利用履歴はカード会社によって電子データとして一元管理され、Web明細で「いつ」「誰が(どのカードで)」「どの区間を」「いくら」利用したかが一覧で確認できます。多くの会計ソフトは、この利用明細データをCSV形式などで取り込む機能を持っており、手作業での入力を不要にします。これにより、入力ミスのリスクがなくなると同時に、経理担当者は内容の最終確認と仕訳作業に集中できるようになります。月々の経費精算にかかっていた時間を大幅に短縮し、より生産的な業務にリソースを振り分けることが可能になるのです。
② 高速道路料金の各種割引が適用される
ETCを利用することで適用される各種割引は、法人にとっても大きなコスト削減に繋がります。個人向けカードと同様に適用される基本的な割引には、以下のようなものがあります。
- 平日朝夕割引: 平日の朝(6時~9時)と夕方(17時~20時)の利用に対して、月の利用回数に応じて最大50%の料金が還元されます(後日還元)。
- 深夜割引: 毎日0時~4時の間に高速道路を利用した場合、料金が30%割引されます。
- 休日割引: 土日祝日に地方部の高速道路を利用した場合、料金が30%割引されます。
これらの割引は、法人ETCカードでももちろん適用されます。さらに、前述の通り、ETCコーポレートカードを選択すれば、「大口・多頻度割引」という強力な割引制度の恩恵を受けることができます。これは月々の利用額に応じて割引率が変動するもので、利用が多ければ多いほどコストメリットが大きくなります。運送業や物流業のように、高速道路の利用が事業の根幹をなす企業にとっては、この割引が収益性に直接的なインパクトを与えることも少なくありません。自社の利用状況を分析し、最適な割引制度を活用することで、年間に換算すると数十万円から数百万円単位での経費削減が期待できます。
③ 従業員の立替払いや精算の手間がなくなる
従業員の視点に立つと、立替払いは心理的・物理的な負担となります。特に、長距離の移動や頻繁な出張がある場合、一時的とはいえ数万円単位の現金を個人で負担するのは大きなストレスです。また、料金所で慌てて現金を用意したり、精算のために大量の領収書を管理したりする手間もかかります。
法人ETCカードを従業員に貸与することで、これらの立替払いが一切不要になります。従業員は現金の心配をすることなく、スムーズに業務を遂行できます。帰社後に面倒な精算申請書を作成する必要もなくなり、本来の業務に集中する時間を確保できます。
これは、従業員の業務負担を軽減し、モチベーションを維持する上で非常に重要です。結果として、従業員満足度(ES)の向上にも繋がり、優秀な人材の定着にも貢献すると考えられます。福利厚生の一環として、法人ETCカードの導入を検討する企業も増えています。
④ 支払い猶予により資金繰りが改善する
特にクレジット機能が付帯した法人ETCカードの場合、利用料金はカード会社によって立て替えられ、後日(通常は翌月または翌々月)に法人口座から一括で引き落とされます。これは、支払いまでに1ヶ月から2ヶ月程度の猶予期間が生まれることを意味します。
この支払い猶予は、企業のキャッシュフロー、つまり現金の流れを安定させる上で大きなメリットとなります。特に、設立間もないスタートアップ企業や、季節によって売上の変動が大きい中小企業にとって、手元の現金を確保しておくことは事業を継続する上で極めて重要です。突発的な支払いが発生した場合でも、ETC料金の支払いが後になることで、資金繰りの柔軟性が高まります。
現金での都度払いや即時引き落としのデビットカードと比較して、クレジットカードの仕組みを活用することで、手元資金を有効に活用し、安定した経営基盤を築く一助となるのです。
⑤ 利用明細で不正利用を防止しやすい
経費の不正利用は、企業にとって看過できないリスクです。現金での立替払いの場合、本当に業務で利用されたものなのかを正確に把握することは困難でした。例えば、私的な旅行で利用した高速道路の領収書が、業務上の経費として紛れ込んでしまう可能性もゼロではありません。
法人ETCカードを導入すれば、利用明細に通行区間や日時が明確に記録されるため、経費の利用実態が可視化されます。これにより、明らかに業務とは関係のない利用(休日の深夜に自宅と行楽地を往復している、など)を容易に発見できます。
このような監視機能は、不正を直接的に発見するだけでなく、「常に見られている」という意識を従業員に持たせることで、不正行為そのものを未然に防ぐ抑止力として機能します。これは、企業の内部統制(コーポレート・ガバナンス)を強化し、コンプライアンスを遵守する上で非常に重要な要素です。従業員にカードを貸与する際は、私的利用を禁止する社内ルールを明確に定め、利用明細を定期的にチェックする体制を整えることで、より効果的に不正利用を防止できます。
法人ETCカードのデメリットと注意点
法人ETCカードは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。これらを事前に把握し、対策を講じることで、よりスムーズな運用が可能になります。
年会費や発行手数料などのコストがかかる場合がある
法人ETCカードの導入・維持には、カードの種類に応じてさまざまなコストが発生する可能性があります。これらのコストを事前に把握せずに導入すると、想定外の出費に繋がりかねません。
【主なコストの種類】
- 年会費:
- 法人カード本体の年会費: クレジット機能付きのカードの場合、親カードである法人カードに年会費がかかるのが一般的です。年会費は、一般カードであれば1,000円台から、ゴールドカードやプラチナカードになると数万円に及ぶものまでさまざまです。年会費が高いカードほど、ポイント還元率が高かったり、付帯サービスが充実していたりする傾向があります。
- ETCカードの年会費: 法人カードとは別に、追加で発行するETCカード自体にも年会費(500円程度)が設定されている場合があります。ただし、「初年度無料」や「年に1回以上の利用で翌年度も無料」といった条件付きで無料になるカードも多く存在します。
- 発行手数料:
- 新規発行手数料: 法人カードやETCカードを新規に発行する際に、一度だけかかる手数料です。無料の場合も多いですが、特に協同組合系のETCカードでは設定されていることがあります。
- 組合関連費用(クレジット機能なしETCカードの場合):
- 出資金: 協同組合が発行するETCカードを利用する場合、組合への加入が必須となり、その際に1万円程度の出資金を預ける必要があります。この出資金は、組合を脱退する際に返還されるのが一般的です。
- 組合費: 年会費とは別に、組合の運営費として月額または年額の組合費が必要になる場合があります。
- 保証金(ETCコーポレートカードの場合):
- ETCコーポレートカードを発行する際には、利用料金の支払いを担保するための保証金を預託する必要があります。金額は、月間の想定利用額の4ヶ月分が目安とされており、利用額が大きい企業にとっては初期投資が大きくなる可能性があります。
これらのコストは、経費削減を目的としてカードを導入する上で無視できない要素です。年会費が永年無料のカードを選ぶのか、それとも年会費を支払ってでもポイント還元率や付帯サービスのメリットを享受するのか、企業の利用状況や方針に応じて慎重に比較検討する必要があります。例えば、高速道路の利用が少ないにもかかわらず高額な年会費のカードを選ぶと、コスト倒れになる可能性があります。逆に、利用額が非常に多い企業であれば、多少の年会費を払っても高い還元率のカードを選んだ方が、トータルでお得になるケースが多いでしょう。
従業員による私的利用のリスクがある
法人ETCカードは、その利便性の高さから、従業員による私的利用のリスクを内包しています。特に、社用車をプライベートでも利用することを許可している場合や、カードの管理が徹底されていない場合に、このリスクは高まります。
【私的利用の具体例】
- 休日に家族旅行で高速道路を利用する際に、法人ETCカードを使ってしまう。
- 通勤で高速道路を利用する際に、会社が許可していないにもかかわらずカードを利用する。
- 友人とのドライブなど、業務とは全く関係のない場面で利用する。
こうした私的利用が発生すると、会社は不要な経費を負担することになります。また、税務調査が入った際に、これらの利用が経費として認められず、追徴課税の対象となる可能性もあります。
このリスクを低減するためには、事前の対策と事後のチェック体制の両方が不可欠です。
【私的利用の防止策】
- 社内ルールの策定と周知徹底:
- 法人ETCカードの利用目的を「業務利用のみ」に限定し、私的利用を固く禁止する旨を明記した規定を作成します。
- 通勤での利用可否、出張先での自由時間における利用の扱いなど、具体的なケースを想定したガイドラインを設けます。
- 私的利用が発覚した場合のペナルティ(利用料金の自己負担、懲戒処分の可能性など)についても明確に定めておきます。
- これらのルールを、カードを貸与する全従業員に対して説明し、理解と同意を得ることが重要です。
- 利用明細の定期的チェック:
- 経理担当者や部署の管理者が、毎月必ず利用明細を確認する体制を構築します。
- 「利用日時」「通行区間」などをチェックし、業務内容と照らし合わせて不審な点がないかを確認します。特に、休日や深夜の利用、業務エリアから大きく外れた区間の利用は注意深く見る必要があります。
- 不審な利用があった場合は、速やかに該当従業員に事実確認を行います。
- カードの厳格な管理:
- 車両ごとにカードを紐づけ、「〇〇号車専用」として管理します。
- 業務終了後は、カードを車内に放置せず、キーボックスなどで一括管理する方法も有効です。
- クレジット機能なしカードの選択:
- 私的利用のリスクを根本から排除したい場合は、買い物などに使えないクレジット機能なしのETC法人カードを選ぶのも一つの有効な手段です。
これらの対策を講じることで、従業員のモラルハザードを防ぎ、カードの適正な利用を促進できます。デメリットを正しく理解し、適切な管理体制を構築することが、法人ETCカードを成功裏に活用するための鍵となります。
経費削減につながる法人ETCカードの選び方
自社にとって最適な法人ETCカードを選ぶことは、経費削減と業務効率化を最大化するための重要なステップです。ここでは、カード選定の際に比較検討すべき7つのポイントを具体的に解説します。
年会費や発行手数料で選ぶ
まず最初に確認すべきは、カードの維持にかかる直接的なコストです。特に、高速道路の利用頻度がそれほど高くない企業にとっては、年会費や手数料が重荷になる可能性があります。
- 永年無料のカード: 一部の法人カードやETCカードは、年会費が永年無料です。コストを最優先するなら、これらのカードが第一候補になります。ただし、付帯サービスやポイント還元率が他のカードに劣る場合があるため、トータルでの損得を考える必要があります。
- 条件付き無料のカード: 「初年度年会費無料」や「年間〇〇万円以上の利用で翌年度も無料」といった条件付きで年会費が無料になるカードも多くあります。自社の利用額が条件をクリアできそうか、事前にシミュレーションしてみましょう。
- 有料のカード: 年会費がかかるカードは、その分、ポイント還元率が高かったり、手厚い保険やビジネスサポートが付帯していたりします。これらの付加価値と年会費を天秤にかけ、コスト以上のメリットがあるかを判断することが重要です。
協同組合系のカードを選ぶ場合は、出資金(返還される)や組合費(返還されない)も考慮に入れる必要があります。初期費用とランニングコストの両方をリストアップし、比較検討しましょう。
ポイント還元率の高さで選ぶ
高速道路の利用額が多い企業にとって、ポイント還元率は経費削減に直結する非常に重要な要素です。
- 基本還元率: 一般的な法人カードのポイント還元率は0.5%程度ですが、中には1.0%以上の高還元率を誇るカードもあります。例えば、月間30万円のETC利用がある場合、還元率0.5%なら1,500円相当、1.0%なら3,000円相当のポイントが貯まります。年間では18,000円もの差になります。
- 特定の条件下での還元率アップ: 特定のガソリンスタンドでの給油や、特定のオンラインサービスでの支払いでポイント還元率がアップするカードもあります。ETC利用だけでなく、他の経費支払いと合わせて、総合的にどれだけポイントが貯まるかを考えると、よりお得なカードが見つかります。
- ポイントの使い道: 貯まったポイントの使い道も重要です。キャッシュバック(請求額への充当)、マイルへの交換、ギフト券や商品への交換など、自社にとって使い勝手の良い交換先があるかを確認しましょう。請求額に充当できるキャッシュバックは、最も直接的な経費削減に繋がります。
必要な発行枚数で選ぶ
社用車や営業担当者の数に応じて、必要なETCカードの枚数は異なります。カード会社やカードの種類によって、発行できる枚数には大きな差があります。
- クレジットカード付帯型: 発行枚数に上限が設けられていることが多く、一般カードでは数枚程度、ゴールドやプラチナなどの上位カードでは数十枚まで発行可能な場合があります。申し込み前に、自社が必要とする枚数を発行できるか必ず確認しましょう。
- 協同組合発行型: 原則として、車両台数分のカードを発行可能な場合が多く、従業員数が多い企業や運送業など、多くのカードが必要な場合に適しています。
- ETCコーポレートカード: 車両ごとに発行されるため、登録車両の数だけ発行できます。
将来的に車両が増える可能性も考慮し、余裕を持った発行枚数が可能なカードを選ぶと安心です。
クレジット機能の有無で選ぶ
これは、カードの運用方針や企業の状況によって選択が分かれる重要なポイントです。
- クレジット機能あり:
- メリット: ETC利用以外にも、ガソリン代、出張時の宿泊費、接待交際費、備品購入など、さまざまな経費の支払いを一枚に集約できます。経費管理がさらに簡素化され、ポイントも効率的に貯められます。
- デメリット: 私的利用や目的外利用のリスクが高まります。また、設立間もない企業は審査に通りにくい場合があります。
- クレジット機能なし:
- メリット: 用途が高速道路料金の支払いに限定されるため、不正利用のリスクを根本から排除できます。クレジット審査がないため、設立直後の企業や個人事業主でも作りやすいです。
- デメリット: 経費の支払いを一本化することはできず、ポイント還元もありません。
企業の設立年数、信用状況、従業員の管理体制などを考慮して、どちらが自社に適しているかを判断しましょう。
車両限定の条件を確認する
特に注意が必要なのが、カードが特定の車両に限定されるかどうかという点です。
- ETCコーポレートカード: 事前に登録した車両番号の車でしか利用できません。 登録外の車両で利用した場合、大口・多頻度割引が適用されないだけでなく、契約違反となる可能性があります。
- 協同組合発行のカード: 一部のカードでは、ETCコーポレートカードと同様に車両限定のルールが設けられている場合があります。
- クレジットカード付帯型: 基本的に車両の限定はなく、どの車に挿入して使っても問題ありません。レンタカーや従業員の私有車を業務で利用する場合にも柔軟に対応できます。
自社の車両運用(特定の社用車のみか、レンタカーなども利用するか)に合わせて、適切なタイプのカードを選ぶ必要があります。
ETCマイレージサービスの対象か確認する
ポイント還元とは別に、ETCマイレージサービスへの登録も忘れてはなりません。これは、NEXCOなどが運営するポイントサービスで、支払った通行料金に応じてポイントが貯まり、そのポイントを無料通行分に交換できる制度です。
ほとんどの法人ETCカードはマイレージサービスに登録できますが、ETCコーポレートカードは大口・多頻度割引が適用されるため、ETCマイレージサービスの対象外となります。クレジットカード付帯型や協同組合型のカードを選ぶ場合は、忘れずに登録手続きを行いましょう。登録は無料です。カード会社のポイントとETCマイレージポイントの二重取りが可能となり、さらなる経費削減に繋がります。
ガソリン割引などの付帯サービスで選ぶ
最後に、ETC利用以外の付帯サービスにも目を向けましょう。これらのサービスをうまく活用することで、トータルでのコスト削減や業務の利便性向上に繋がります。
- ガソリン割引: 特定の石油会社の法人カードでは、提携ガソリンスタンドでの給油がリッターあたり数円引きになる特典があります。車両を多く保有する企業にとっては、大きなメリットです。
- ビジネスサポート: 会計ソフトの割引優待、オフィス用品の割引購入、レンタルサーバーの優待など、ビジネスの現場で役立つサービスが付帯しているカードもあります。
- 保険・補償: 国内外の旅行傷害保険やショッピング保険などが付帯していれば、万が一の際も安心です。
- 空港ラウンジ: 出張が多い企業であれば、主要空港のラウンジを無料で利用できるサービスは、従業員の負担軽減や満足度向上に貢献します。
これらの付帯サービスと年会費のバランスを考え、自社の事業活動に最も貢献してくれるカードを選ぶことが、賢い選択と言えるでしょう。
【2024年最新】おすすめの法人ETCカード10選
ここでは、これまで解説してきた選び方のポイントを踏まえ、2024年最新情報に基づいたおすすめの法人ETCカードを10種類厳選してご紹介します。各カードの特徴を比較し、自社に最適な一枚を見つけるための参考にしてください。
カード名 | 年会費(税込) | ETC年会費(税込) | ポイント還元率 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
三井住友カード ビジネスオーナーズ | 永年無料 | 永年無料(※) | 0.5%~1.5% | 特定加盟店で高還元。個人カードとの2枚持ちでさらにお得。 |
JCB法人カード(一般) | 1,375円 | 無料 | 0.5%~ | 信頼のJCBブランド。豊富なビジネスサポート。 |
アメックス・ビジネス・グリーン | 13,200円 | 550円 | 1.0%(※) | 高いステータスと手厚いビジネスサポート、旅行関連サービス。 |
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックス | 22,000円 | 無料 | 0.5%~1.25% | JALマイル高還元。プラチナ級のサービスが魅力。 |
楽天ビジネスカード | 2,200円(※) | 無料 | 1.0% | 楽天市場での利用で高還元。楽天ポイントが貯まる。 |
ライフカードビジネスライトプラス | 永年無料 | 永年無料 | 0.5%~ | 年会費無料で弁護士相談サービス付帯。スタートアップ向け。 |
UPSIDERカード | 無料(※) | 要問い合わせ | 1.0%~ | 成長企業向け。利用限度額が高い。バーチャルカード対応。 |
ETC協同組合 ETC法人カード | -(※) | 550円/枚 | なし | クレジット審査なし。設立直後でも発行可能。 |
高速情報協同組合 ETC法人カード | -(※) | 無料 | なし | クレジット審査なし。車両限定なし。ガソリン割引あり。 |
NEXCO ETCコーポレートカード | 無料 | 無料 | -(※) | 大口・多頻度割引で圧倒的なコスト削減。運送業向け。 |
※年会費・還元率等には各種条件があります。詳細は公式サイトをご確認ください。 |
① 三井住友カード ビジネスオーナーズ
設立間もない法人や個人事業主におすすめの、コストパフォーマンスに優れた一枚です。年会費が永年無料で、ETCカードも年に1回以上の利用で翌年度無料になるため、維持コストをほとんどかけずに持つことができます。AmazonやANAなど特定のパートナー店の利用でポイント還元率が最大1.5%にアップするのが大きな魅力。個人の三井住友カードと2枚持ちすることで、さらなるポイントアップも狙えます。
(参照:三井住友カード株式会社 公式サイト)
② JCB法人カード
日本発の国際ブランドであるJCBが発行する、信頼性の高いスタンダードな法人カードです。年会費は1,375円(税込)と手頃ながら、ETCカードは複数枚無料で発行可能。サイバーリスク保険が自動付帯するほか、会計ソフトの優待など、中小企業のビジネスをサポートする堅実なサービスが充実しています。初めて法人カードを作る企業にも安心してお勧めできます。
(参照:株式会社ジェーシービー 公式サイト)
③ アメリカン・エキスプレス・ビジネス・グリーン・カード
「アメックス」ブランドがもたらす高いステータスと、手厚いビジネスサポートが魅力のカードです。年会費は13,200円(税込)と高めですが、空港ラウンジの同伴者1名無料利用、手荷物無料宅配サービスなど、出張が多いビジネスパーソンにとって価値のあるサービスが豊富に揃っています。利用限度額に一律の制限を設けていないため、高額な決済にも柔軟に対応可能です。
(参照:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 公式サイト)
④ セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
プラチナカードならではの豪華な特典と、JALマイルの高い還元率(最大1.25%)が特徴です。年会費は22,000円(税込)ですが、年間200万円以上の利用で翌年度の年会費が半額になります。24時間365日対応のコンシェルジュサービスや、世界中の空港ラウンジを利用できる「プライオリティ・パス」に無料で登録できるなど、経営者をサポートするサービスが充実しています。
(参照:株式会社クレディセゾン 公式サイト)
⑤ 楽天ビジネスカード
楽天プレミアムカード(年会費11,000円税込)の付帯カードとして発行される法人決済用カードです。年会費は別途2,200円(税込)かかりますが、楽天市場での利用でポイントが最大5倍になるなど、楽天経済圏をよく利用する企業にとっては非常にお得です。貯まった楽天ポイントを経費の支払いに充当することも可能で、直接的なコスト削減に繋がります。
(参照:楽天カード株式会社 公式サイト)
⑥ ライフカードビジネスライトプラス
年会費が永年無料でありながら、弁護士無料相談サービスや福利厚生サービスが付帯するなど、コストパフォーマンスが非常に高いカードです。特に、法務に関する相談が気軽にできる点は、法務部を持たないスタートアップや中小企業にとって大きな安心材料となります。ポイント還元率は標準的ですが、維持コストをかけずに手厚いサポートを受けたい企業におすすめです。
(参照:ライフカード株式会社 公式サイト)
⑦ UPSIDERカード
「挑戦者を支える法人カード」を掲げ、急成長中のスタートアップやベンチャー企業から高い支持を得ています。最大の特徴は、最大10億円という高い利用限度額と、柔軟な与信審査です。リアルカードに加えて、部署や用途別に何枚でも発行できるバーチャルカードにも対応しており、SaaSの支払いや広告費の管理を効率化できます。ETCカードも発行可能です(要問い合わせ)。
(参照:株式会社UPSIDER 公式サイト)
⑧ ETC協同組合 ETC法人カード
クレジット審査なしで発行できる、協同組合発行のETC専用カードの代表格です。設立間もない会社や個人事業主でも申し込みやすく、最短10日程度でカードが届きます。出資金1万円が必要ですが、これは脱退時に返還されます。マイレージサービスにも登録可能で、クレジット機能付きカードの審査に不安がある場合の有力な選択肢となります。
(参照:ETC協同組合 公式サイト)
⑨ 高速情報協同組合 ETC法人カード
こちらもクレジット審査不要で発行できる組合系のカードです。大きな特徴は、車両が限定されないため、レンタカーなどでも利用できる点です。また、全国の出光SSで利用できる法人専用のガソリンカードも発行しており、給油コストを抑えたい企業にもメリットがあります。カード年会費や発行手数料が無料なのも嬉しいポイントです。(別途、組合への出資金・組合費が必要)
(参照:高速情報協同組合 公式サイト)
⑩ NEXCO東/中/西日本 ETCコーポレートカード
高速道路の利用が月に数万円以上になる企業にとって、最強のコスト削減ツールです。大口・多頻度割引により、他のカードとは比較にならない割引率を実現します。発行には保証金が必要で、登録車両でしか使えないという制約はありますが、特に運送業、バス会社、長距離移動が多い営業会社などにとっては、導入メリットがデメリットを大きく上回ります。
(参照:NEXCO東日本/中日本/西日本 各公式サイト)
法人ETCカードの作り方と発行までの4ステップ
自社に合ったカードが決まったら、次はいよいよ申し込みです。ここでは、法人ETCカードを申し込んでから発行されるまでの一般的な流れを4つのステップで解説します。
① 申し込みに必要な書類を準備する
申し込みにあたっては、法人の実在を証明するための書類や、代表者の本人確認書類などが必要になります。事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。
【法人企業の場合の一般的な必要書類】
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本): 発行から6ヶ月以内の原本またはコピー。法務局で取得できます。
- 代表者の本人確認書類: 運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー。
- 法人口座の情報がわかるもの: 通帳のコピーなど。
- (場合によって)決算書、事業計画書など
【個人事業主の場合の一般的な必要書類】
- 代表者の本人確認書類: 運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー。
- 開業届の控え または 直近の確定申告書の控え
- 事業用口座の情報がわかるもの: 通帳のコピーなど。
必要な書類はカード会社や組合によって異なるため、必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
② Webサイトや申込書で申し込む
書類が準備できたら、実際に申し込み手続きを行います。申し込み方法は、主に2通りあります。
- Webサイトでの申し込み:
多くのクレジットカード会社では、オンラインで申し込みが完結します。フォームに必要な情報を入力し、準備した書類のデータをアップロードするだけなので、時間や場所を選ばず手軽に申し込めます。 - 申込書での申し込み:
公式サイトから申込書をダウンロード・印刷して郵送する方法や、資料請求をして送られてきた申込書に記入して返送する方法です。協同組合系のカードでは、この方法が主流の場合もあります。
入力内容に誤りがあると、審査に時間がかかったり、差し戻されたりする原因になるため、慎重に確認しながら進めましょう。
③ カード会社の審査を受ける
申し込みが完了すると、カード会社や組合による審査が行われます。この審査は、カードを安心して発行できるか、利用料金をきちんと支払えるかを見極めるための重要なプロセスです。
【審査でみられる主なポイント】
- 事業の実態: 事業内容が明確で、継続的に活動しているか。
- 設立年数・事業歴: 事業を始めてからどのくらいの期間が経っているか。一般的に、事業歴が長いほど信用度は高まります。
- 財務状況: (特にクレジット機能付きの場合)決算書などから、収益性や安定性を判断します。黒字経営である方が有利です。
- 代表者の信用情報: 会社の信用情報とあわせて、代表者個人のクレジットヒストリー(過去の延滞など)が参照される場合もあります。
審査期間は、クレジット機能付きの法人カードで1週間~3週間程度、クレジット機能なしの組合系カードで1週間~2週間程度が目安です。
④ カードが発行・郵送される
無事に審査を通過すると、カードが発行され、法人の登記住所(または代表者の自宅住所)に郵-送されます。
- カードの受け取り: カードは「本人限定受取郵便」や「簡易書留」などで送られてくるのが一般的です。
- カード到着までの期間: 申し込みからカードが手元に届くまでは、全体で2週間~1ヶ月程度を見ておくと良いでしょう。
- 別送の場合: 法人カード(親カード)とETCカードが別々のタイミングで届くこともあります。
カードが届いたら、裏面の署名欄にサインをし、すぐに利用を開始できます。車載器に正しく挿入されているかを確認してから、高速道路で利用しましょう。
法人ETCカードに関するよくある質問
ここでは、法人ETCカードの導入を検討する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
個人事業主でも法人ETCカードは作れますか?
はい、作れます。
個人事業主の場合、選択肢は主に2つあります。
- ビジネスカード(個人事業主向け)に付帯するETCカード:
多くのクレジットカード会社が、法人代表者向けとは別に、個人事業主向けのビジネスカードを発行しています。これらのカードに申し込むことで、屋号付きの口座を引き落とし先に設定できるETCカードを作ることが可能です。申し込み時には、本人確認書類に加えて、開業届や確定申告書の控えが必要になるのが一般的です。 - クレジット機能なしのETC法人カード:
高速情報協同組合などが発行するETCカードは、法人格を持たない個人事業主でも加入・発行が可能です。クレジット審査がないため、開業したばかりで事業実績が少ない場合でも比較的作りやすいのがメリットです。
個人事業主であっても、事業で利用した経費とプライベートの支出を明確に分けることは、確定申告をスムーズに行う上で非常に重要です。事業用のETCカードを持つことで、経費管理が格段に楽になります。
ETCカードは何枚まで発行できますか?
発行可能な枚数は、カードの種類や発行元によって大きく異なります。
- 法人カード付帯のETCカード:
カード会社やカードのランク(一般、ゴールド、プラチナなど)によって上限が定められています。一般カードでは従業員用に追加で数枚程度、プラチナカードなどでは20枚~50枚程度まで発行できる場合もあります。自社が必要とする枚数を発行できるか、申し込み前に必ず確認しましょう。 - ETCコーポレートカード:
車両ごとに1枚発行されるため、登録する車両台数分だけ発行できます。発行枚数に実質的な上限はありません。 - クレジット機能なしのETC法人カード:
こちらもETCコーポレートカードと同様に、基本的には車両台数分のカードを発行可能な組合が多いです。従業員や車両が多い企業でも安心して利用できます。
年会費が無料の法人ETCカードはありますか?
はい、あります。
年会費が永年無料の法人ETCカードは、特にコストを抑えたいスタートアップ企業や中小企業にとって魅力的な選択肢です。
- 年会費永年無料の例:
- 三井住友カード ビジネスオーナーズ: 法人カード本体、ETCカードともに年会費永年無料(※ETCカードは年1回の利用が必要)。
- ライフカードビジネスライトプラス: 法人カード本体、ETCカードともに年会費永年無料。
ただし、注意点として、年会費が無料のカードは、有料のカードに比べてポイント還元率が低めであったり、付帯サービスが限定的であったりする場合があります。年会費だけでなく、ポイント還元や付帯サービスを含めたトータルのコストパフォーマンスで判断することが重要です。
従業員が退職した場合、ETCカードはどうすればいいですか?
従業員が退職する際には、貸与していた法人ETCカードを必ず回収し、速やかに解約手続きを行う必要があります。
【退職時の対応フロー】
- カードの回収: 退職日までに、本人からETCカードを確実に回収します。最終出社日などに返却してもらうよう、事前に伝えておきましょう。
- カード会社への連絡: 回収後、すぐにカード会社(または協同組合)のカスタマーサービスに連絡し、該当のETCカードを解約したい旨を伝えます。
- カードの破棄: 解約手続きが完了したら、指示に従ってカードにハサミを入れて破棄します。ICチップと磁気ストライプの部分を確実に切断してください。
カードを回収せずに放置したり、解約手続きを怠ったりすると、退職後もカードが利用され、会社が意図しない料金を請求されるリスクがあります。また、紛失や盗難による不正利用の危険性も高まります。従業員の入退社に伴うカードの管理は、企業のコンプライアンス上、非常に重要な業務と認識し、徹底した管理体制を敷くことが求められます。
まとめ
本記事では、法人ETCカードの基本から、メリット・デメリット、自社に最適なカードの選び方、そして具体的なおすすめカードまで、幅広く解説してきました。
法人ETCカードの導入は、もはや単なる経費精算ツールの導入に留まりません。それは、経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、従業員の負担を軽減し、キャッシュフローを改善し、そして企業のガバナンスを強化する、戦略的な一手と言えます。
最後に、経費削減と業務効率化を実現する最適な一枚を見つけるためのステップを再確認しましょう。
- 現状把握: まず、自社の高速道路の月間利用額、利用頻度、利用する車両台数を正確に把握します。
- 種類の選定: 把握した現状に基づき、「クレジット機能付き法人カード」「ETCコーポレートカード」「クレジット機能なしETC法人カード」の3つの種類から、自社に最も適したタイプを絞り込みます。
- 詳細比較: 絞り込んだタイプの中から、年会費、ポイント還元率、発行枚数、付帯サービスといった具体的な条件を比較検討し、最終的な一枚を決定します。
特に、高速道路の利用額が多い企業ほど、ポイント還元率や割引率が収益性に与えるインパクトは大きくなります。一方で、設立間もない企業やコストを極力抑えたい場合は、年会費無料のカードやクレジット審査のない組合系カードが有力な選択肢となるでしょう。
この記事が、貴社の事業成長を加速させる最適な法人ETCカード選びの一助となれば幸いです。利用明細の一元管理による業務効率化と、各種割引やポイント還元によるコスト削減を両立させ、より強く、よりスマートな経営基盤を築いていきましょう。