Concur(コンカー)とは?機能や料金 メリットをわかりやすく解説

Concur(コンカー)とは?、機能や料金 メリットをわかりやすく解説

企業の成長を支える上で、売上向上と並行して重要となるのが「コスト管理」です。特に、従業員の経費精算、出張手配、サプライヤーへの支払いといった「間接費」の管理は、多くの企業にとって煩雑で時間のかかる業務であり、経営上の大きな課題となっています。紙の領収書や請求書がオフィスに溢れ、手作業での入力やチェックに追われる経理部門。複雑な申請プロセスに時間を奪われる従業員。そして、経費の実態が見えず、有効なコスト削減策を打ち出せない経営層。こうした課題を解決するために、近年注目を集めているのが、経費精算・出張・請求書管理を統合的に効率化するクラウドシステムです。

この記事では、その中でもグローバルで高いシェアを誇るSAP社の「Concur(コンカー)」について、その全体像から具体的な機能、導入のメリット・デメリット、料金体系、さらにはどのような企業におすすめなのかまで、網羅的に詳しく解説します。Concurが単なる経費精算ツールではなく、いかにして企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、経営基盤を強化する戦略的プラットフォームとなり得るのか、その本質に迫ります。

Concur(コンカー)とは

Concur(コンカー)とは

Concur(コンカー)は、一言で表すならば「間接費管理に関わるあらゆる業務をデジタル化し、一元管理するためのクラウド型ソリューション」です。提供元は、世界的なビジネスソフトウェア企業であるSAP社です。多くの企業が個別の課題として捉えがちな「経費精算」「出張管理」「請求書管理」を一つのプラットフォーム上に統合し、データとプロセスを連携させることで、業務の抜本的な効率化とガバナンス強化を実現します。

これまで多くの企業では、経費精算はExcelと紙の領収書、出張手配は旅行代理店への電話やメール、請求書処理は紙の書類を回覧してハンコを押す、といったアナログな方法で行われてきました。これらの方法は、従業員、承認者、経理担当者のそれぞれに大きな負担を強いるだけでなく、多くの非効率とリスクを内包しています。

  • 従業員(申請者)の負担: 領収書の糊付け、Excelへの手入力、精算のための出社など、本来の業務ではない作業に多くの時間を費やしている。
  • 管理職(承認者)の負担: 部下から提出される大量の申請書の内容を一つひとつ確認し、規程に合っているかを判断する作業が大きな負担となり、承認の遅延や見落としが発生しやすい。
  • 経理部門の負担: 全社から集まる申請書と領収書の突合、会計システムへの手入力、規程違反のチェック、振込作業、問い合わせ対応など、業務が集中し、月末月初の残業が常態化している。
  • 経営層の課題: 間接費が「いつ」「誰が」「何に」「いくら」使ったのか、その実態をリアルタイムで把握できず、データに基づいた戦略的なコスト削減が難しい。また、不正経費のリスクも常に付きまとう。

Concurは、こうした間接費管理にまつわる根深い課題を、テクノロジーの力で解決するために生まれました。

経費精算・出張・請求書管理を効率化するクラウドシステム

Concurの最大の特徴は、前述の通り、経費精算、出張管理、請求書管理という3つの主要な間接費領域をシームレスに連携させる統合プラットフォームである点です。これにより、単体のツールを導入するだけでは得られない、相乗効果を生み出します。

例えば、出張を例に考えてみましょう。従来の方法では、①出張申請書を提出し、②承認を得てから、③旅行代理店や予約サイトで航空券・ホテルを予約し、④出張先で立て替えた経費の領収書を保管し、⑤帰社後に経費精算書を作成して提出する、というようにプロセスが分断されていました。

Concurを導入すると、この一連の流れが劇的に変わります。
まず、Concur Travelで出張申請を行うと、承認された内容に基づき、会社の出張規程に準拠した航空券やホテルが提示され、そのまま予約できます。出張先で利用した交通費や接待費は、Concur Expenseのスマートフォンアプリで領収書を撮影すれば、データが自動で入力されます。そして、帰社後には、出張前に予約したデータと、出張中に申請した経費データが紐づいた状態で精算レポートが自動作成されるため、従業員は内容を確認して提出するだけです。

このように、申請から予約、精算までの一連のプロセスがConcur上で完結し、データが自動で連携することで、従業員の手間は最小限に抑えられ、経費の透明性も格段に向上します。

また、Concurはクラウドシステムであるため、インターネット環境さえあれば、PC、スマートフォン、タブレットなど、デバイスを問わずにいつでもどこでも利用可能です。これにより、外出先や出張先からの経費申請・承認、テレワーク環境下での請求書処理などが可能となり、多様な働き方に柔軟に対応できます。

近年、電子帳簿保存法(電帳法)の改正やインボイス制度の導入など、企業の経理業務を取り巻く環境は大きく変化しています。Concurはこれらの法制度にも標準で対応しており、法対応という守りの側面だけでなく、それを機に業務プロセス全体を見直し、企業の競争力を高めるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための強力なエンジンとしての役割が期待されています。

Concurの主な機能

Concur Expense(経費精算)、Concur Travel(出張管理)、Concur Invoice(請求書管理)、Concur Request(事前申請)、Intelligence / Analyse(データ分析・レポート)、App Center(外部サービス連携)

Concurは、間接費管理の課題を解決するための多彩な機能をモジュールとして提供しています。企業は自社の課題やニーズに合わせて、必要な機能を組み合わせて導入できます。ここでは、Concurを構成する主要な機能について、それぞれ詳しく解説します。

Concur Expense(経費精算)

Concur Expenseは、経費精算にまつわるあらゆる手作業を自動化し、申請者から経理担当者まで、関わるすべての人の業務を効率化する中核機能です。紙の領収書やExcelでの管理といった従来の方法から脱却し、スマートな経費精算プロセスを実現します。

主な機能と特徴

  • 領収書の電子化と自動入力: スマートフォンのカメラで領収書を撮影するだけで、AI-OCR(光学的文字認識)技術が日付、金額、支払先などの情報を自動で読み取り、経費明細を作成します。 これにより、従業員による手入力の時間を大幅に削減し、入力ミスを防ぎます。
  • 交通系ICカード連携: SuicaやPASMOなどの交通系ICカードを専用リーダーや対応スマートフォンにかざすだけで、利用履歴を自動で取り込みます。駅名から運賃が自動計算されるため、乗り換え案内のサイトで運賃を調べる手間がなくなります。
  • 法人カード連携: コーポレートカード(法人カード)の利用明細データを自動でConcurに取り込み、経費レポートに反映させます。従業員は利用した明細を選択するだけで申請が完了し、経理担当者はカード利用のモニタリングが容易になります。
  • 規程違反の自動チェック: 企業ごとに設定された経費規程(例:タクシー利用の上限金額、交際費の単価上限、深夜残業時のタクシー利用可否など)をシステムに登録しておくことで、申請内容が規程に違反している場合に、申請者と承認者の双方にリアルタイムでアラート(警告)を表示します。 これにより、承認者のチェック負荷を軽減するとともに、不適切な経費申請を未然に防ぎ、ガバナンスを強化します。
  • モバイル対応: スマートフォンアプリが提供されており、経費の申請、承認、確認といった一連の作業を、場所や時間を選ばずに行えます。移動中の隙間時間などを活用して経費精算を完了させられるため、従業員の生産性向上に直結します。

これらの機能により、Concur Expenseは「面倒で時間のかかる作業」であった経費精算を、「簡単でスピーディーなプロセス」へと変革します。

Concur Travel(出張管理)

Concur Travelは、出張の申請から航空券・ホテルの手配、精算までを一元管理し、出張コストの最適化と出張者の安全確保を実現する機能です。出張規程の遵守を徹底させながら、従業員にとって利便性の高い手配プロセスを提供します。

主な機能と特徴

  • オンライン予約機能: Concurのプラットフォーム上で、国内外の航空券、ホテル、レンタカーなどの予約が可能です。出張規程に基づいて、利用可能な交通機関や宿泊施設、料金の上限などがフィルタリングされて表示されるため、従業員は規程の範囲内で自由に旅程を選択できます。これにより、規程違反の予約を未然に防ぎ、コストコントロールを徹底します。
  • 出張申請・承認連携: 出張の事前申請プロセスと予約プロセスが連携しています。上長の承認を得た旅程のみが予約可能となるため、不要な出張や規程外の出張を防止します。
  • 旅程管理と情報提供: 予約したフライトやホテルの情報はConcur上に集約され、出張者はいつでも自分の旅程を確認できます。フライトの遅延や欠航情報などがリアルタイムで通知される機能もあります。
  • 危機管理(Risk Messaging): 自然災害、テロ、政情不安など、出張先で緊急事態が発生した際に、影響を受ける可能性のある出張者の居場所を迅速に特定し、安否確認や注意喚起のメッセージを送信できます。 企業の危機管理体制と従業員の安全(Duty of Care)を確保する上で非常に重要な機能です。
  • コストの可視化と分析: 誰が、いつ、どの航空会社やホテルを、いくらで利用したかといったデータがすべて蓄積されるため、出張コスト全体を可視化し、分析できます。これにより、特定の航空会社とのボリュームディスカウント交渉や、出張規程の見直しといった、戦略的なコスト削減策の検討が可能になります。

Concur Invoice(請求書管理)

Concur Invoiceは、サプライヤーから受け取る請求書の処理プロセスをデジタル化し、支払業務の効率化と内部統制の強化を実現する機能です。紙やPDFなど、様々な形式で届く請求書を一元的に管理します。

主な機能と特徴

  • 請求書のデジタルデータ化: 紙で受け取った請求書はスキャンして、PDFで受け取った請求書はそのままConcurにアップロードすることで、デジタルデータとして管理します。AI-OCR機能により、請求書番号、日付、金額、支払先などの情報が自動でデータ化されます。
  • 承認ワークフローの電子化: 請求書の内容に基づき、あらかじめ設定された承認ルート(購買担当者、部門長、経理担当者など)に自動で回付されます。担当者はPCやスマートフォンから内容を確認・承認できるため、紙の請求書を社内で持ち回る必要がなくなり、承認プロセスが大幅にスピードアップします。
  • 3点照合の自動化: 購買プロセスにおける内部統制の要である「3点照合(発注書・納品書・請求書)」をシステム上で自動化できます。 発注データと請求書データの内容が一致しているかをシステムが自動でチェックし、不一致がある場合は担当者に警告します。これにより、二重支払いや過払いを防ぎ、不正のリスクを低減します。
  • 支払処理の効率化: 承認済みの請求書データは、会計システムやERP(統合基幹業務システム)と連携し、振込データ(FBデータ)の作成や仕訳の計上を自動化します。経理担当者の手作業をなくし、支払業務の正確性とスピードを向上させます。
  • インボイス制度への対応: 適格請求書発行事業者の登録番号の確認や、税率ごとの金額計算など、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した機能も備えています。

Concur Request(事前申請)

Concur Requestは、出張や高額な経費の利用、接待交際費など、支出が発生する前に事前申請を行い、承認を得るための機能です。事後報告ではなく、事前の統制を効かせることで、コンプライアンス遵守と予算管理の精度を高めます。

主な機能と特徴

  • 柔軟な申請フォーム設定: 申請内容に応じて、入力が必要な項目(目的、日時、場所、参加者、概算費用など)を自由にカスタマイズした申請フォームを作成できます。
  • 予算連携と執行管理: 申請時に、関連する部門やプロジェクトの予算と照合し、予算残高をリアルタイムで表示できます。 予算超過の恐れがある場合にはアラートを出すことで、無計画な支出を抑制し、予算の執行状況を正確に管理します。
  • 事後精算との連携: 事前申請が承認されると、その内容がConcur Expenseに引き継がれます。従業員は、承認された申請内容に基づいて事後精算を行うため、申請内容と精算内容の突合作業が容易になります。

Intelligence / Analyse(データ分析・レポート)

Intelligence / Analyseは、Concurの各機能に蓄積された膨大な間接費データを分析・可視化し、経営の意思決定に役立つインサイトを提供する機能です。標準で用意されている豊富な定型レポートに加え、ユーザーが独自に分析できるセルフサービス型の分析ツールも提供されます。

主な機能と特徴

  • ダッシュボード: 経費全体のサマリー、規程違反の発生状況、部門別の経費トップ5など、重要なKPIをグラフィカルなダッシュボードで一目で把握できます。
  • 定型レポート: 費目別レポート、従業員別レポート、サプライヤー(支払先)別レポートなど、様々な切り口のレポートが用意されており、間接費の利用実態を多角的に分析できます。
  • 戦略的なコスト削減の支援: 「どの部署で、どのような経費が、なぜ増えているのか」「特定のサプライヤーへの支払いが集中していないか」「出張規程を見直すことで、どれくらいのコスト削減が見込めるか」といった問いに対する答えを、データに基づいて導き出すことができます。 これにより、勘や経験に頼らない、戦略的なコストマネジメントが可能になります。

App Center(外部サービス連携)

Concur App Centerは、Concurと様々な外部のクラウドサービスやアプリケーションを連携させるためのハブ(プラットフォーム)です。これにより、Concurの機能を拡張し、よりシームレスで自動化された業務プロセスを構築できます。

主な機能と特徴

  • 豊富な連携アプリ: 会計システムやERPはもちろん、タクシー配車アプリ(Uberなど)、名刺管理ソフト、駐車場予約サービス、Wi-Fiレンタルサービスなど、出張や経費精算に関連する多種多様なサービスと連携できます。
  • シームレスなデータ連携: 例えば、連携しているタクシー配車アプリを利用すると、その利用履歴や領収書データが自動的にConcurに送信され、経費レポートに反映されます。これにより、従業員は領収書の受け取りや申請の手間から解放されます。
  • エコシステムの形成: App Centerを通じて、Concurは経費精算という枠を超え、ビジネスパーソンの業務を支える広範なエコシステムを形成しています。 企業は自社で利用しているサービスをConcurと連携させることで、業務効率を最大化できます。

Concurを導入するメリット

経費精算・管理業務を大幅に効率化できる、ガバナンス強化と不正防止につながる、ペーパーレス化を推進できる、間接費の可視化でコストを削減できる、電子帳簿保存法に対応できる

Concurの導入は、単に経理業務が楽になるというだけでなく、企業経営全体に多岐にわたるメリットをもたらします。ここでは、Concurがもたらす主要なメリットを5つの観点から深掘りします。

経費精算・管理業務を大幅に効率化できる

Concur導入による最も直接的で分かりやすいメリットは、経費精算・管理に関わるすべての人の業務を劇的に効率化できる点です。これは、申請者、承認者、経理担当者という3つの立場それぞれに恩恵をもたらします。

  • 申請者(従業員)のメリット:
    • 入力作業の激減: スマートフォンでの領収書撮影、交通系ICカードの読み取り、法人カード連携により、手入力作業がほぼ不要になります。これまで月に数時間かかっていた作業が、数分で完了するようになります。
    • 場所と時間の制約からの解放: モバイルアプリを使えば、移動中や出張先などの隙間時間を利用して申請が可能です。精算のためにわざわざ会社に戻る必要がなくなります。
    • 申請・差戻しのストレス軽減: 申請内容の不備や規程違反はシステムが事前にチェックしてくれるため、差戻しの回数が減り、スムーズに精算が完了します。
  • 承認者(管理職)のメリット:
    • 承認作業のスピードアップ: 部下からの申請はPCやスマートフォンに通知され、いつでもどこでも内容を確認・承認できます。これにより、承認の遅延が原因で業務が滞留するボトルネックを解消します。
    • チェック負荷の軽減: 規程違反の申請にはシステムが自動でアラートを出すため、承認者は細かな規程をすべて記憶しておく必要がありません。本来注力すべき申請内容の妥当性(本当に業務に必要な支出か)の判断に集中できます。
    • ペーパーレス化による管理の容易さ: 紙の書類を探したり、保管したりする必要がなくなり、過去の申請履歴も簡単に検索できます。
  • 経理担当者のメリット:
    • 手作業の撲滅: 全社から集まる紙の領収書と申請書の目視チェック、Excelへの転記、会計システムへの再入力といった手作業がなくなります。
    • 仕訳・振込作業の自動化: Concurと会計システムを連携させることで、承認済みの経費データに基づいて仕訳が自動で作成され、振込データ(FBデータ)も自動生成されます。
    • 問い合わせ対応の削減: 従業員からの「申請方法は?」「規程はどうなっている?」といった問い合わせが大幅に減ります。経理担当者は、より付加価値の高い分析業務や企画業務に時間を使えるようになります。

このように、Concurは従業員一人ひとりを非生産的な作業から解放し、会社全体の生産性向上に大きく貢献します。

ガバナンス強化と不正防止につながる

企業の信頼性を維持し、健全な経営を続ける上で、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化は不可欠です。Concurは、経費利用におけるルール遵守を徹底させ、不正を未然に防ぐための強力な仕組みを提供します。

  • 経費規程のシステム化と徹底:
    人の目によるチェックには、どうしても限界や見落とし、判断のばらつきが生じます。Concurでは、企業の経費規程をシステムにルールとして組み込むことで、すべての経費申請に対して公平かつ客観的なチェックを自動で行います。 例えば、「1回の飲食費は1人あたり5,000円まで」「私的な飲み会の二次会費用は認めない」といったルールを徹底させることが可能です。
  • 不正の兆候を自動検知:
    Concurは、過去の膨大な経費データを分析し、不正の可能性が高いパターンを検知する機能も備えています。例えば、「短期間に同じ店で何度も高額な飲食をしている」「週末や深夜に不自然なタクシー利用がある」「他の従業員と重複した領収書を提出している」といった異常な申請に対してアラートを出すことができます。これにより、意図的な不正行為を牽制し、早期に発見する体制を構築できます。
  • プロセスの可視化と証跡管理:
    誰が、いつ、何を申請し、誰が、いつ、どのような判断で承認したか、そのすべてのプロセスがシステム上に電子的な記録(ログ)として残ります。この「監査証跡」は、後から経緯を追跡する上で非常に重要であり、内部監査や会計監査の際に、客観的な証拠として提出できます。これにより、監査対応の工数を大幅に削減するとともに、企業の透明性・信頼性を高めることにつながります。

Concurによるガバナンス強化は、単にルールで縛るだけでなく、従業員のコンプライアンス意識を向上させ、健全で公正な企業文化を醸成する効果も期待できます。

ペーパーレス化を推進できる

多くの企業で課題となっているペーパーレス化を、Concurは強力に推進します。経費精算や請求書処理のプロセスから紙を排除することは、コスト削減だけでなく、働き方の変革にもつながります。

  • コスト削減:
    紙の領収書や請求書を扱う際には、紙代、印刷代、郵送費、ファイルやキャビネットなどの備品代、そして保管スペースの賃料といった様々なコストが発生します。ペーパーレス化により、これらの物理的なコストを削減できます。
  • 業務効率の向上:
    紙の書類は、必要な情報を探すのに時間がかかります。電子データであれば、キーワードや日付で瞬時に検索が可能です。また、書類を物理的に回覧する必要がなくなるため、承認や処理のリードタイムが大幅に短縮されます。
  • テレワーク・多様な働き方への対応:
    紙の書類を扱う業務は、従業員をオフィスに縛り付ける最大の要因の一つです。 領収書を提出するため、請求書を処理するために出社しなければならない状況では、本格的なテレワークの導入は困難です。Concurによって経費・請求書業務が完全にデジタル化されれば、従業員は場所を選ばずに業務を遂行でき、働き方の自由度が高まります。
  • BCP(事業継続計画)対策:
    地震や水害などの自然災害が発生し、オフィスに出社できなくなった場合でも、クラウド上で業務が完結する体制が整っていれば、事業を継続できます。ペーパーレス化は、企業のBCP対策としても非常に有効です。

Concurの導入は、経理部門だけでなく、全社的なペーパーレス化と、それに伴う新しい働き方を実現するための重要な一歩となります。

間接費の可視化でコストを削減できる

「経費は聖域(サンクチュアリ)」と言われることがあるように、間接費は売上に直接結びつかないため、その実態が把握しにくく、管理が甘くなりがちな領域です。Concurは、これまでブラックボックス化していた間接費を完全に可視化し、データに基づいた戦略的なコスト削減を可能にします。

ConcurのIntelligence機能を使えば、以下のような多角的な分析が容易に行えます。

  • 費目別・部門別の経費分析: 「どの部門で、何の経費が、前年と比べて増減しているのか」を正確に把握し、その原因を深掘りできます。
  • サプライヤー分析: 「どのサプライヤーへの支払いが最も多いのか」「同様のサービスをより安価に提供してくれるサプライヤーはいないか」をデータに基づいて検討し、価格交渉やサプライヤーの見直しにつなげます。
  • 出張コスト分析: 「最も利用頻度の高い航空会社やホテルはどこか」を分析し、特定の企業とボリュームディスカウント契約を結ぶことで、出張コスト全体を削減できます。
  • 規程違反の傾向分析: 「どのような規程違反が多いのか」を分析し、より実態に即した規程に見直したり、従業員への周知を徹底したりすることで、無駄な支出を抑制します。

Concurがもたらす最大の価値の一つは、間接費データを単なる「記録」から、経営を改善するための「情報資産」へと昇華させることにあるのです。

電子帳簿保存法に対応できる

2022年1月に改正電子帳簿保存法(電帳法)が施行され、企業は国税関係帳簿書類の電子保存に関する要件を満たすことが求められるようになりました。特に、電子的に受け取った請求書や領収書(電子取引)は、電子データのまま保存することが義務化され、多くの企業が対応に迫られています。

Concurは、この電帳法の要件に標準で対応しています。

  • スキャナ保存要件への対応:
    紙で受け取った領収書や請求書をスマートフォンやスキャナで電子化して保存する「スキャナ保存」に対応しています。電子化したデータにタイムスタンプを付与する機能などを備えており、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」を取得しているため、安心して利用できます。(参照:SAP Concur公式サイト)
  • 電子取引要件への対応:
    メールで受け取ったPDFの請求書や、Webサイトからダウンロードした領収書などの電子取引データを、改ざん防止の措置を講じた上で、検索可能な状態で保存する要件に対応しています。

法改正への対応は、多くの企業にとって負担の大きい守りのIT投資と捉えられがちですが、Concurを導入することで、これを機にペーパーレス化や業務プロセスの見直しを一気に進め、攻めのデジタルトランスフォーメーションへとつなげることができます。

Concurのデメリット・注意点

導入や運用にコストがかかる、操作に慣れるまで時間がかかる、小規模な企業には機能が過剰な場合がある

多くのメリットがある一方で、Concurの導入を検討する際には、いくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。これらを事前に把握し、対策を講じることが、導入を成功させるための鍵となります。

導入や運用にコストがかかる

Concurは非常に高機能でグローバル標準のプラットフォームであるため、その分、導入や運用にかかるコストは、他の比較的安価な経費精算システムと比較して高くなる傾向があります。

  • 初期導入費用: システムの初期設定、既存システムとの連携、導入コンサルティングなどにかかる費用です。企業の規模や要件の複雑さによって変動します。
  • 月額利用料: 主に利用するユーザー数(ID数)や、導入するモジュール(Expense, Travel, Invoiceなど)の種類によって決まります。従業員数が多い大企業では、月々のランニングコストも相応の金額になります。

これらの直接的な費用に加え、社内での導入プロジェクトを推進するための人件費や、従業員へのトレーニングにかかる時間的コストも考慮に入れる必要があります。

対策としては、導入によって得られる効果(業務効率化による人件費削減、コスト削減効果など)を具体的に数値化し、投資対効果(ROI)を事前にしっかりと試算することが不可欠です。 「なぜConcurでなければならないのか」「Concurを導入して何を実現したいのか」という目的を明確にし、経営層の理解を得ることが重要となります。

操作に慣れるまで時間がかかる

Concurは多機能であるがゆえに、初めて利用するユーザーにとっては、そのすべての機能をすぐに使いこなすのが難しい場合があります。特に、これまで長年アナログな方法に慣れ親しんできた従業員や、ITツールに不慣れな従業員からは、導入当初に抵抗感や戸惑いの声が上がる可能性があります。

  • ユーザーインターフェース(UI)の課題: グローバルで標準化されたUIが採用されているため、日本のユーザーの一部からは「直感的でない」「項目が多くて分かりにくい」と感じられることがあるかもしれません。
  • 設定の複雑さ: 企業の複雑な経費規程や承認フローをシステムに反映させるための初期設定は、専門的な知識を要する場合があります。自社だけで対応するのが難しい場合は、導入支援パートナーのサポートが不可欠です。

対策としては、導入プロジェクトの初期段階から、丁寧なコミュニケーションと準備を行うことが重要です。

  • マニュアルやFAQの整備: 自社の運用に合わせた分かりやすい操作マニュアルや、よくある質問とその回答(FAQ)を事前に準備し、従業員がいつでも参照できる環境を整えます。
  • 段階的な導入とトレーニング: 全社一斉に導入するのではなく、特定の部署で先行導入(パイロット導入)を行い、課題を洗い出してから全社展開する方法も有効です。また、集合研修やオンライン勉強会などを実施し、操作方法を丁寧にレクチャーする機会を設けることが、スムーズな定着につながります。
  • 社内推進体制の構築: 各部署にConcurの推進担当者を置くなど、導入後の問い合わせに対応できる社内ヘルプデスク体制を構築することで、ユーザーの不安を解消できます。

小規模な企業には機能が過剰な場合がある

Concurは、グローバル展開する大企業や、複雑な組織・規程を持つ中堅企業をメインターゲットとして設計されています。そのため、従業員数が数十名程度の小規模な企業や、経費精算のプロセスが非常にシンプルな企業にとっては、機能が過剰(オーバースペック)となり、コストに見合わない可能性があります。

例えば、海外出張が全くなく、出張管理機能(Concur Travel)や多言語・多通貨対応が不要な場合や、請求書の処理件数が少なく、請求書管理機能(Concur Invoice)の高度なワークフローが不要な場合などです。

自社の規模、業務の複雑性、将来的な事業拡大の計画などを総合的に勘案し、本当にConcurの多機能性が必要かどうかを冷静に判断する必要があります。

もし、主な課題が国内の経費精算の効率化に限定されるのであれば、よりシンプルで安価な他の経費精算システム(後述の比較サービスなど)を検討する方が、費用対効果が高いケースもあります。「自社の身の丈に合ったシステムは何か」という視点で、複数の選択肢を比較検討することが重要です。

Concurの料金プラン

Concurの導入を検討する上で、最も気になる点の一つが料金でしょう。しかし、多くのエンタープライズ向けSaaS(Software as a Service)と同様に、Concurも公式サイトでは具体的な料金プランを公開していません。

料金プランは非公開で要問い合わせ

SAP Concurの公式サイトを確認しても、具体的な価格表や料金シミュレーターのようなものは用意されていません。その理由は、Concurの料金が、導入する企業の規模、従業員数、利用する機能(モジュール)、業種、既存システムとの連携の有無など、様々な要因によって大きく変動する個別見積もりの体系をとっているためです。

一つの決まったパッケージを提供するのではなく、顧客企業一社一社の課題や要望をヒアリングし、最適な機能の組み合わせと構成を提案するコンサルティング型の販売スタイルが基本となります。

したがって、正確な料金を知るためには、SAP Concurの公式サイトにある問い合わせフォームや電話を通じて、自社の状況を伝えた上で、見積もりを依頼する必要があります。(参照:SAP Concur公式サイト)

参考価格の考え方

具体的な金額は提示できませんが、Concurの料金体系がどのような要素で構成されているのか、その基本的な考え方を理解しておくことは重要です。一般的に、以下のような要素の組み合わせで料金が決定されると考えられます。

費用項目 内容 課金体系の例
初期費用 導入時のシステム設定、コンサルティング、マスタ登録、従業員へのトレーニングなどにかかる一時的な費用。 一括払い
月額利用料 システムを継続的に利用するための費用。ランニングコストとなる。 ユーザー課金: 利用する従業員(ID)数に応じて課金される。最も一般的なモデル。
モジュール課金: Concur Expense, Concur Travel, Concur Invoiceなど、利用する機能モジュールごとに料金が設定されている。
従量課金: 請求書の処理件数など、利用量に応じて課金される場合もある。
オプション費用 標準機能以外の追加機能や、特別なサポート、外部システムとの高度な連携開発などを利用する場合に発生する費用。 都度見積もり

ポイントは、単純な「1ユーザーあたり月額いくら」という価格だけでなく、どの機能(モジュール)を選択するかによって総額が大きく変わるという点です。 例えば、経費精算のConcur Expenseだけを導入する場合と、出張管理のConcur Travelや請求書管理のConcur Invoiceも合わせて導入する場合では、料金は大きく異なります。

導入を検討する際は、まず自社の課題を整理し、「どの業務領域をデジタル化したいのか」を明確にした上で、必要な機能を見極め、見積もりを依頼することをおすすめします。

Concurの使い方

交通系ICカードを読み取り自動登録、領収書を撮影しAI-OCRで自動入力、作成した明細をまとめてアプリから提出

ここでは、Concurの最も基本的な機能である経費精算(Concur Expense)について、従業員(申請者)と管理職(承認者)のそれぞれの視点から、具体的な使い方や操作フローのイメージを解説します。

経費の申請フロー

営業担当者のAさんが、取引先への訪問で電車を利用し、その後、会食で接待を行ったという架空のシナリオで見てみましょう。従来であれば、帰社後に交通費を調べ、領収書を精算書に貼り付け、Excelに入力…といった手間がかかりました。Concurを使うと、このプロセスは以下のように変わります。

  1. 移動中(交通費の申請):
    • 取引先への訪問が終わり、駅の改札を出たところで、AさんはスマートフォンのConcurモバイルアプリを起動します。
    • アプリのメニューから「交通系ICカード」を選択し、スマートフォンのNFC機能を使って自分のSuicaを読み取ります。
    • すると、先ほど利用した乗車区間(例:新宿→渋谷)と運賃が自動で明細として取り込まれます。Aさんは訪問先などを簡単に入力するだけで、交通費の登録が完了します。運賃を調べる手間は一切ありません。
  2. 会食後(接待費の申請):
    • 取引先との会食が終わり、領収書を受け取ったAさんは、その場でConcurモバイルアプリのカメラ機能を使います。
    • 「領収書を撮影」をタップし、領収書全体が写るように撮影します。
    • すると、AI-OCRが画像から「支払日」「支払先(店舗名)」「金額」を自動で読み取り、経費明細の各項目に自動で入力します。
    • Aさんは、自動入力された内容に間違いがないかを確認し、経費の種類を「接待交際費」に設定。そして、参加者(社内・社外)や目的といった会社の規程で定められた必須項目を追加入力します。
  3. 申請レポートの提出:
    • オフィスに戻る途中や、帰宅後のわずかな時間で、AさんはConcurアプリから経費レポートを作成します。
    • 先ほど登録した交通費と接待費の明細がリストアップされているので、それらを選択し、一つのレポートにまとめます。
    • レポートの内容を最終確認し、「提出」ボタンをタップ。これで申請作業はすべて完了です。紙の領収書を台紙に貼ったり、Excelを開いたりする必要は一切ありません。

このように、Concurは経費が発生したその場で、隙間時間を使って申請作業を完結させることを可能にします。 これにより、面倒な作業の後回しによる申請漏れや遅延を防ぎ、従業員のストレスを大幅に軽減します。

経費の承認フロー

次に、Aさんの上司であるB部長(承認者)の視点で見てみましょう。

  1. 承認依頼の通知:
    • Aさんが経費レポートを提出すると、B部長のPCやスマートフォンに「承認依頼があります」という通知が届きます。メールで通知を受け取る設定も可能です。
  2. 申請内容の確認:
    • B部長は、外出先で次のアポイントを待つ間に、スマートフォンでConcurアプリを開き、Aさんからの申請内容を確認します。
    • レポートには、交通費や接待費の明細、Aさんが撮影した領収書の画像、入力した目的や参加者などの情報がすべて表示されます。紙の書類が手元になくても、承認に必要なすべての情報を確認できます。
  3. 規程違反の自動チェック:
    • ここで、Aさんが申請した接待費の1人あたりの金額が、会社の規程で定められた上限(例:8,000円)を超えていたとします。
    • その場合、Concurのシステムが自動で規程違反を検知し、該当する明細に赤色の警告アイコン(アラート)を表示します。 B部長は、このアラートによって、問題点を一目で把握できます。
  4. 承認または差戻し:
    • 警告アイコンを確認したB部長は、Aさんの申請を承認せず、「差戻し」を選択します。
    • 差戻しの理由を尋ねるコメント欄が表示されるので、「1人あたりの上限額を超えています。理由を追記してください」といったコメントを入力し、Aさんに差し戻します。
    • もし、すべての明細に問題がなければ、「承認」ボタンをタップするだけで承認プロセスは完了です。承認されたレポートは、自動的に次の承認者(経理部など)に回付されます。

このように、承認者は場所を選ばずにスピーディーな判断ができ、システムの補助によってチェックの精度も向上します。 これにより、承認のボトルネックが解消され、経費精算プロセス全体のリードタイムが劇的に短縮されるのです。

Concurの導入がおすすめの企業

Concurはその多機能性と拡張性から、あらゆる規模・業種の企業で導入されていますが、特にそのメリットを最大限に享受できるのは、以下のような特徴を持つ企業です。

経費精算の業務フローが複雑な企業

企業の規模が大きくなるにつれて、経費精算の業務フローは複雑化する傾向にあります。もし、貴社が以下のような状況に当てはまるなら、Concurの導入は非常に有効な解決策となります。

  • 承認ルートが多段階・複雑: 申請金額や費目、申請者の所属部署や役職によって、承認者が変わるなど、承認ルートが複雑に分岐している。
  • 経費規程が細かい: 役職ごとの出張時の宿泊費上限、部門ごとの交際費予算、プロジェクトごとの経費コードの割り当てなど、守るべき規程が細かく、多岐にわたる。
  • 拠点や部門が多い: 国内外に多数の拠点があり、それぞれで経費精算を行っているため、全社的な状況の把握やルールの統一が難しい。

こうした複雑な要件は、手作業や簡易的なツールでは管理が非常に困難であり、ミスや不正の温床となりがちです。Concurの強みは、こうした企業ごとの独自の複雑なルールやワークフローを、システム上に柔軟に設定・再現できる点にあります。 人の判断に依存していたプロセスをシステム化することで、統制を効かせながら、効率的な運用を実現できます。

海外出張が多いグローバル企業

グローバルに事業を展開し、従業員の海外出張や海外拠点とのやり取りが多い企業にとって、Concurは「グローバルスタンダード」とも言える選択肢です。

  • 多言語・多通貨への対応: Concurは世界中の主要な言語と通貨に標準で対応しています。海外の従業員は自国の言語・通貨で経費を申請でき、日本の本社ではそれらが自動で日本円に換算されて管理されるため、グローバルでの経費処理がスムーズに行えます。
  • 各国の税制への対応: 海外の付加価値税(VAT)など、各国の複雑な税制に対応した処理が可能です。還付可能な税金を適切に処理することで、コスト削減にもつながります。
  • グローバルでのガバナンス統一: 世界中のすべての拠点で同じConcurのプラットフォームを利用することで、経費ポリシーや承認プロセスをグローバルレベルで標準化し、統一的なガバナンスを効かせることが可能になります。 これにより、本社から各海外拠点の経費利用状況をリアルタイムで可視化し、統制することができます。
  • 危機管理体制の構築: 前述の通り、Concur Travelの危機管理機能は、海外に出張・赴任している従業員の安全を確保する上で非常に重要です。地政学的リスクが高まる現代において、従業員の安全配慮義務(Duty of Care)を果たすための必須ツールと言えるでしょう。

テレワークやペーパーレス化を推進したい企業

働き方改革の一環として、テレワークの導入やペーパーレス化を経営課題として推進している企業にとって、Concurは強力な推進力となります。

  • 脱・紙とハンコ: 経費精算や請求書処理は、オフィスに紙とハンコの文化が根強く残る代表的な業務領域です。Concurを導入し、これらの業務を完全にデジタル化・クラウド化することで、「精算のために出社する」「請求書にハンコを押すために出社する」といった状況をなくすことができます。
  • 場所に縛られない働き方の実現: Concurによってバックオフィス業務がデジタル化されることで、従業員は自宅やサテライトオフィスなど、場所を選ばずに働けるようになります。 これは、従業員のワークライフバランス向上や、多様な人材の確保にもつながります。
  • 経営DXの推進: ペーパーレス化やテレワーク対応は、単なるコスト削減や福利厚生に留まりません。業務プロセスをデジタル前提で見直し、データを活用して経営の意思決定を行う「デジタルトランスフォーメーション(DX)」そのものです。 Concurの導入をきっかけとして、バックオフィス全体のDXを加速させたいと考える企業に、Concurは最適です。

Concurと連携できる主なサービス

freee会計、NotePM、LINE CLOVA OCR、Uber

Concurの価値をさらに高めるのが、Concur App Centerを通じて提供される外部サービスとの連携機能です。これにより、経費精算・管理の領域を超えて、様々な業務プロセスの自動化・効率化を実現できます。ここでは、代表的な連携サービスをいくつか紹介します。

freee会計

freee会計は、中小企業を中心に広く利用されているクラウド会計ソフトです。

  • 連携内容: Concurで承認された経費精算データや支払依頼データが、API連携によって自動的にfreee会計に送信されます。
  • メリット: 送信されたデータに基づいて、freee会計側で仕訳が自動で作成されます。 これにより、経理担当者がConcurのデータを会計ソフトに手入力する作業が不要になり、入力ミスを防ぐとともに、月次決算の早期化に大きく貢献します。(参照:freee株式会社公式サイト, SAP Concur App Center)

NotePM

NotePMは、社内のナレッジやノウハウを蓄積・共有するためのナレッジ共有ツール(社内版Wikipediaのようなツール)です。

  • 連携内容: 直接的なデータ連携というよりは、運用面での連携です。Concurの導入にあたって作成した社内向けの操作マニュアル、経費規程、よくある質問(FAQ)などをNotePMに集約して管理します。
  • メリット: 従業員がConcurの利用で不明な点があった際に、まずNotePMで自己解決できるよう促すことで、情報システム部門や経理部門への問い合わせ件数を大幅に削減できます。 これにより、管理部門の負担を軽減し、Concurのスムーズな社内定着を支援します。(参照:株式会社プロジェクト・モード公式サイト, SAP Concur App Center)

LINE CLOVA OCR

LINE CLOVA OCRは、LINE社が提供する高精度なAI-OCRサービスです。

  • 連携内容: Concurは標準でOCR機能を備えていますが、LINE CLOVA OCRと連携することで、さらに高度な文字認識が可能になります。特に、手書きの領収書や、定型化されていない請求書など、読み取りが難しいとされる帳票にも高い精度で対応します。
  • メリット: OCRの読み取り精度が向上することで、従業員が読み取り結果を修正する手間がさらに削減されます。これにより、完全な入力レスを目指すことができ、業務効率を極限まで高めることが可能になります。(参照:LINE株式会社公式サイト, SAP Concur App Center)

Uber

Uberは、世界中で利用されているタクシー配車サービスです。ビジネス利用向けの「Uber for Business」というサービスを提供しています。

  • 連携内容: 従業員が個人のUberアカウントとConcurアカウントを連携させ、会社の「ビジネスプロフィール」を設定します。従業員がビジネスプロフィールを使ってUberに乗車すると、その利用履歴と電子領収書が自動的にConcurアカウントに送信されます。
  • メリット: 従業員は領収書をもらったり、それを申請したりする手間が一切なくなります。 利用履歴は自動で経費レポートに登録されるため、申請漏れや入力ミスを防ぎ、シームレスな移動経費の精算を実現します。(参照:Uber Technologies Inc.公式サイト, SAP Concur App Center)

Concurとよく比較されるサービス

経費精算システムの導入を検討する際には、Concur以外の選択肢と比較することで、自社に最適なツールを見極めることができます。ここでは、Concurとよく比較検討される代表的なサービスを3つ挙げ、その特徴を整理します。

サービス名 主な特徴 ターゲット企業 強み
SAP Concur 経費精算・出張・請求書を統合管理するグローバル標準プラットフォーム 中堅〜大企業、グローバル企業 グローバル対応、ガバナンス強化、データ分析
楽楽精算 導入実績が豊富で、日本の商習慣にフィットした経費精算システム 中小〜大企業 コストパフォーマンス、使いやすさ、サポート体制
マネーフォワード クラウド経費 バックオフィス業務全体を効率化するクラウドサービス群の一機能 個人事業主、中小企業 会計ソフトとのシームレスな連携
J’sNAVI NEO JTBグループが提供する出張手配・管理に特化したシステム 出張が多い企業(特に国内) 豊富な出張コンテンツ手配、出張管理の効率化

楽楽精算

株式会社ラクスが提供する「楽楽精算」は、国内導入社数No.1を誇る(※)経費精算システムです。(※参照:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」2022年度版)

  • 特徴: シンプルで分かりやすいインターフェースと、日本の商習慣に合わせたきめ細やかな機能が特徴です。例えば、乗換案内ソフトとの連携による交通費の自動計算、自動仕訳、FBデータ作成など、経費精算に必要な機能を網羅しています。
  • Concurとの違い: Concurがグローバルスタンダードの多機能プラットフォームであるのに対し、楽楽精算は日本のユーザーにとっての「使いやすさ」と「コストパフォーマンス」に重点を置いています。 サポート体制も手厚く、導入支援も充実しているため、初めて経費精算システムを導入する企業でも安心して利用できます。主に国内での経費精算の効率化を目的とする企業にとって、有力な選択肢となります。(参照:株式会社ラクス公式サイト)

マネーフォワード クラウド経費

株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド」シリーズの一つです。

  • 特徴: 「マネーフォワード クラウド会計」「マネーフォワード クラウド請求書」など、同社の他のバックオフィス向けサービスとシームレスに連携することが最大の特徴です。
  • Concurとの違い: Concurが間接費管理の統合プラットフォームであるのに対し、マネーフォワード クラウドは経費精算を含むバックオフィス業務全体の効率化を目指すサービス群です。 特に、会計ソフトとの連携が非常にスムーズなため、経費精算から会計処理までの流れを一つのブランドで完結させたい中小企業や、既にマネーフォワード クラウドの他のサービスを利用している企業に適しています。(参照:株式会社マネーフォワード公式サイト)

J’sNAVI NEO

株式会社JTBビジネストラベルソリューションズが提供する、出張管理に強みを持つシステムです。

  • 特徴: JTBグループの強みを活かし、国内のJRや航空券、宿泊施設などのオンライン手配機能が非常に充実しています。出張の申請から手配、精算までをワンストップで行えるBTM(Business Travel Management)ツールとしての側面が強いサービスです。
  • Concurとの違い: Concur Travelがグローバルな出張管理と危機管理に強みを持つ一方、J’sNAVI NEOは特に国内出張の手配と管理の効率化に特化しています。 日々の経費精算よりも、出張に関する業務(手配の効率化、コスト削減、規程遵守)に大きな課題を抱えている企業にとっては、有力な比較対象となるでしょう。(参照:株式会社JTBビジネストラベルソリューションズ公式サイト)

Concurの良い評判・口コミ

申請業務が圧倒的に楽になった、ペーパーレス化でテレワークがしやすくなった、ガバナンスが強化され、不正がなくなった、経費データが可視化され、コスト削減につながった

特定の導入事例を挙げることはできませんが、一般的にConcurを導入した企業や利用者から聞かれる良い評判や評価されるポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 「申請業務が圧倒的に楽になった」という声: 最も多く聞かれるのが、申請プロセスの劇的な効率化に対する評価です。特に「スマートフォンアプリで領収書を撮るだけで申請がほぼ終わる」という手軽さは、これまで手作業での入力や糊付けに時間を費やしてきた従業員から高く評価されています。これにより、本来のコア業務に集中できる時間が増えたという声が多くあります。
  • 「ペーパーレス化でテレワークがしやすくなった」という声: Concurの導入を機に、経費精算のための出社が不要になったという点は、働き方改革を推進する企業にとって大きなメリットとして捉えられています。承認者も場所に縛られずに承認できるため、業務の停滞がなくなり、組織全体の生産性が向上したという評価です。
  • 「ガバナンスが強化され、不正がなくなった」という声: 経理部門や管理部門からは、規程の自動チェック機能に対する評価が高いです。「システムが公平にチェックしてくれるため、承認者が人間関係に忖度することなく、一貫したルールで運用できるようになった」「意図的な不正だけでなく、うっかりミスによる規程違反も減り、差戻しの手間がなくなった」といった声が聞かれます。
  • 「経費データが可視化され、コスト削減につながった」という声: 経営層や管理職からは、Intelligence機能によるデータ分析が高く評価されています。「これまでブラックボックスだった間接費の実態がデータで明確になり、具体的なコスト削減のアクションプランを立てられるようになった」「サプライヤーとの価格交渉の際に、客観的なデータを示せるようになった」など、戦略的なコストマネジメントへの貢献を評価する声があります。

Concurの悪い評判・口コミ

コストが高い、操作に慣れるまでが大変、小回りが利かないと感じる部分がある

一方で、Concurの導入を検討する上で留意すべき点や、改善を望む声として挙げられることが多いポイントも存在します。

  • 「コストが高い」という意見: やはり、他の経費精算システムと比較して、初期費用や月額料金が高額であるという点は、導入のハードルとして挙げられることがあります。特に、費用対効果を厳しく問われる中小企業からは、「多機能なのは分かるが、自社にはオーバースペックで割高に感じる」という声も聞かれます。導入のメリットを金額換算で明確に示せないと、社内での合意形成が難しい場合があります。
  • 「操作に慣れるまでが大変」という意見: 多機能であるがゆえに、「ユーザーインターフェースが直感的ではなく、どこに何の機能があるのか分かりにくい」「設定項目が多く、自社の運用に合わせるのが難しい」といった声が、特に導入初期のユーザーから聞かれることがあります。グローバル標準のシステムであるため、日本のユーザーの感覚とは少し異なる部分があると感じる人もいるようです。丁寧な導入サポートや社内トレーニングがなければ、定着に時間がかかる可能性があります。
  • 「小回りが利かないと感じる部分がある」という意見: 大企業向けの安定したプラットフォームである反面、「日本の細かい商習慣に合わせたカスタマイズや、ちょっとした仕様変更の要望に対するレスポンスが遅い」と感じるケースもあるようです。国産のツールに見られるような、ユーザーの声に応えた頻繁なアップデートや、柔軟な個別対応を期待すると、ギャップを感じることがあるかもしれません。

これらのネガティブな意見は、Concurの特性を理解し、導入目的を明確にすること、そして導入後の運用・定着支援を計画的に行うことで、多くが解消できる課題であるとも言えます。

まとめ

本記事では、経費精算・出張・請求書管理の統合プラットフォームである「Concur(コンカー)」について、その機能からメリット・デメリット、料金、使い方に至るまで、包括的に解説してきました。

Concurは、単なる経費精算を効率化するツールではありません。その本質は、これまでアナログで分断されていた間接費管理のプロセスをデジタルで一元化し、そこに蓄積されるデータを経営の意思決定に活かすための戦略的プラットフォームであると言えます。

Concur導入の主要なメリット

  • 圧倒的な業務効率化: 申請者、承認者、経理担当者の非生産的な作業をなくし、会社全体の生産性を向上させます。
  • ガバナンス強化: システムによる規程遵守の徹底と不正検知により、企業の信頼性を高めます。
  • ペーパーレス化と働き方改革の推進: 紙とハンコの文化から脱却し、テレワークなど多様な働き方を支援します。
  • 戦略的なコスト削減: 間接費を可視化・分析し、データに基づいたコスト最適化を実現します。
  • 法制度への対応: 電子帳簿保存法やインボイス制度といった法改正にもスムーズに対応できます。

一方で、導入コストの高さや、操作の習熟に時間が必要となる可能性があるといった注意点も存在します。そのため、特に従業員数が多い中堅・大企業、グローバルに事業を展開する企業、そしてDXを経営の中核に据えてバックオフィス全体の変革を目指す企業にとって、Concurは最もその真価を発揮するソリューションと言えるでしょう。

企業の成長ステージが上がり、間接費管理の複雑化やガバナンスの課題に直面したとき、Concurの導入は、業務の効率化という枠を超え、企業の経営基盤そのものを強化し、持続的な成長を支えるための重要な一手となり得ます。

もし貴社が間接費管理に課題を抱えているのであれば、まずは自社の課題を整理し、Concurが提供する価値と自社の目指す方向性が合致するかどうか、公式サイトでの情報収集や問い合わせを通じて、検討を始めてみてはいかがでしょうか。